国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)2023においてサイドイベント (2023年7月13日 ニューヨーク)

2023/07/13
ニューヨーク

国際連合地域開発センター(UNCRD)は、ニューヨーク国連本部で開催された2023ハイレベル政治フォーラム(HLPF)において、サイドイベント「Towards Safe, Smart, Resilient and Sustainable Cities under the 2030 Agenda – Integrated Pathways to Transformation through Local Actions, Partnerships, Technological Interventions, and Infrastructure Development」を開催しました。マレーシア国運輸省、国連日本政府代表部が共催し、国連ハビタット(UN-Habitat)、豊田市、SEEDが協力する形で開催された本イベントには、21カ国から約50人が参加し、持続可能な開発目標(SDGs)、特にゴール11の達成に向けて、都市や自治体が、民間企業、市民社会団体、科学・研究コミュニティ、各国政府と緊密に連携及び協力し、都市計画や開発をいかに計画的、統合的、包括的な方法で進めるべきかについて議論が行われました。

サイドイベントは、国連経済社会局持続可能な開発部長のジュワン・チュウ氏、外務省地球規模課題総括課長の松本好一朗氏、マレーシア国運輸大臣のロケ・シュウ・フック氏(特別ビデオメッセージ)の開会の挨拶ではじまりました。

続いて行われたプレゼンテーションでは、豊田市長の太田稔彦氏が、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)やゼロエミッション・ビークル(ZEV)の普及促進、スマートタウンや再生可能エネルギー発電の導入など、豊田市のカーボンニュートラルの取組みを紹介しました。豊田市は、民間や企業向けにSDGs認証制度を導入しているだけでなく、SDGsに関する「ボランタリーローカルレビュー(VLR)」も実施しています。

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授は、2023年SDGs進捗報告書の調査結果を紹介し、サステナブル・デベロップメント・パスウェイ(SDP、-1.5℃シナリオ)の下では、2030年までにSDGsのほとんどが進展すると述べました。また、2050年までにほとんどのSDGsが達成されるか、目標水準に近づくものの、大気汚染や食品廃棄物の管理などの問題については依然として遅れているだろうと述べ、変革のための手段とエントリーポイントについて説明しました。具体的には、ガバナンス、経済と金融、個人と集団の行動、科学技術とキャパシティビルディングが手段であり、エントリーポイントとしては、人間の幸福と能力、持続可能で公正な経済、持続可能な食料システムと健康的な栄養、ユニバーサルアクセスによるエネルギーの脱炭素化、都市及び都市近郊の開発、地球規模の環境コモンズが挙げられました。そして、都市が、すべてのエントリーポイントにおいて、SDGsの実施に向けた統合的な計画と災害リスク軽減を推進する主導的な役割を果たすべきだと述べました。

SEEDエグゼクティブ・ディレクターのアラブ・ホバラ氏は、スマートシティの未来をリードする中小企業の役割について述べ、中小企業が適切に支援され権限を与えられなければ、気候変動の目標も、循環経済も、スマートでグリーンな持続可能な都市も達成できないと述べました。

国連ハビタット(UN-Habitat)都市基本サービスセクションチーフのアンドレ・ジクス氏は、スマートシティのエコシステムにおいて自然と都市開発のバランスをとる必要性について述べ、都市人口の増加の90パーセント近くは、世界で最も急速に都市化が進んでいるアフリカとアジアで起こるだろうと指摘しました。また、とりわけ公共スペースの保全、コンパクトで複合的な土地利用計画、必要不可欠なサービスや公共施設の提供、公共交通機関の相互接続性、マルチモーダルな統合など、計画的な都市拡張の必要性を強調しました。さらに、都市政策の枠組みにおける自然ベースの国際的な経験や事例を数多く紹介しました。

国土交通省 水管理・国土保全局 河川計画課 国際室長の小浪尊宏氏は、流域に関わるあらゆる関係者が協働して水災害対策を行う日本の事例を発表しました。雨水貯留機能の拡大による洪水防御、ダムの建設・改修・有効利用による流水の貯留、河道の流出能力の確保・向上など、「流域治水」をはじめとする日本の様々な政策的、構造的な施策が紹介されました。また、国土リスク情報の改善、避難体制の強化、経済的被害の最小化、安全な生活の促進、被災自治体への支援体制の改善、迅速な浸水被害の解消など、災害に強いまちづくりの推進に向けた取り組みの重要性を強調しました。

トヨタ自動車株式会社 チーフ・サステナビリティ・オフィサーの大塚友美氏は、持続可能なスマートシティ開発への企業貢献、災害時の非常用電源を支援する豊田市の「SAKURAプロジェクト」、トヨタ・モビリティ基金による都市の持続可能なモビリティソリューション、グリーンビークルとエネルギー、水素及びバイオマス・エネルギーの推進、社会課題解決のためのリビングラボ(Woven Cityプロジェクト)の立ち上げなど、トヨタ自動車株式会社のSDGs推進活動について紹介しました。

各講演の後は、フロアから発言や質疑が行われ、最後は、UNCRDの遠藤和重所長による総括と閉会の挨拶で締めくくられました。